判断基準はここ! 起業初心者が気をつけたい事業か副業かの線引き

令和4年8月1日に国税庁から所得税通達改正案が発表されました。

現在は、パブリックコメントという形でこの改正案に対しての意見を求めている段階であり、正式に所得税の通達の改正がなされたわけではありません。

しかし会社員とのかけもちで起業をしている個人事業主や売上が小規模の個人事業主に対しては、これからのビジネスに大きな影響があることが予想されます。

そこで今回の所得税通達改正案の内容と、会社員(正社員やパート、アルバイト、派遣に限らず、雇用されて給与をもらい生計を立てている人)とのかけもちで起業している個人事業主や売り上げが小規模の事業主が、今後のビジネスをどのように考えたらよいのかについて、お話ししたいと思います。

令和4年8月1日所得税通達改正案

まず令和4年8月1日に国税庁から出された改正案について、お話しします。
その案の中でも中心となっているのは次のようなものです。

事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得を得るための活動が、社会通念上 事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、その所得がその者の主たる所得で なく、かつ、その所得に係る収入金額が 300 万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。(国税庁のHPより抜粋)

これをもっと簡単にいうと、このようなものになります。

もしあなたの行っているビジネスとは別の所得があって、その別の所得の方があなたの主な収入であり、かつあなたのビジネスからの売上(収入)が300万円を超えない場合、そのビジネスから生じる所得は事業所得ではなく雑所得と取り扱いうこととします

そしてそのビジネスが、「事業」として認められるためにはその活動に対して、ある一定の「要件」があるので、それでもって事業かどうかを判断します、という内容です。

そしてここでいうある一定の要件とは、そのビジネスに

①独立性 ②継続性 ③反復性

が客観的に認められるかどうかということです。

この要件の②や③については、あなたが行っているサービスは一時的なものではなく、繰り返し客にそのサービスを提供しているかどうか、またその商売自体が継続的なものであるかどうかで判断します。

もちろん細かな判断基準に対しては、税務署に直接聞くか、税理士さんに判断をお願いするというのも良いと思います。

参考資料:

国税庁「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)」

所得税基本通達新旧対照表

事業か副業かの線引きのポイント

そして上記のような内容から考えると、あなたが行っているビジネスが事業に該当するのか、雑所得になる「副業」扱いになってしまうのかを判断するポイントは、次の4つになります。

事業所得か雑所得(副業扱い)を区別する4つの要件

①社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかを判定する(注:事業と称する程度とは、上記の要件に述べられています。オレンジ色のアンダーラインの箇所を参照のこと)

②あなたのビジネスから生じる所得が、あなたが生計を立てる主たる所得であるかどうか → これが当てはまらないと、副業扱いになる可能性が高い

③その所得の収入金額(売上)が300万円を超えるかどうか → 300万円を超えれば事業とみなされる

④上記について反証がないこと

ですから、今あなたが行っているビジネスが上記の①~④の要件に照らし合わせて、事業とみなされるか、副業扱いとなってしまうのかを考えてみましょう。

例えば、会社員などのように他に雇用されてお給料をもらいながら、それとは別に自分のビジネスをしている場合には、どちらが主たる所得であるのか(どちらによって生計をたてているのか)を考えることがまず大切です。

ここで仮にお給料からの収入で生計を立てていますとした場合、あなたのビジネスからの収入が300万円を超えるかどうかが次のポイントになります。

国税庁の通達(案)では、主たる所得の要件と、収入が300万円を超えるかどうかの判断基準の両方を満たす必要がありますから、お給料からの収入で生計を立てていて、かつ ビジネスの収入が300万円を超えないとなると、あなたのビジネスは「副業扱い」となります。

事業か副業扱いなのかをまずは判断する

あなたのビジネスが「事業」なのか、「副業扱い」なのかを区別することは、令和4年度の確定申告をする時に大切なポイントになります。

それと同時に、もしあなたのビジネスが「事業」として認められなくなった場合は、今まで利用できた控除が使えなくなるなどの問題が出てきます。

そういうことからまずはあなたのビジネスが何にあたるかのを判断したのち、もしも「副業扱い」になってしまったらどのようなデメリットが発生し、今後どうすればよいのかを、次の機会にあらためてお話ししたいと思います。