事業ではなく、副業扱いになってしまった場合の4つのデメリット
前回のブログでは、国税庁から令和4年8月1日に出された所得税通達の改正案についてお話しました。
もしこのまま素案が通り、今年度中に所得税が改正となってしまえば、現在別に給与をもらいながら起業している、あるいはすでに起業をしている人に大きな影響が出ることになります。
なぜかというと、事業扱いされずに副業となってしまうとその起業家にとって増税になりかねないからです。
そこでもしあなたのビジネスが事業ではなく副業扱いになってしまった場合、なぜ増税になってしまうのかを4つの点からお話したいと思います。
副業扱いで何が起こるのか
もしあなたのビジネスが副業になってしまうと何が起こるのでしょうか。
まず日本では様々な収入について10の分類をしています。
例えば、事業所得、不動産所得、給与所得、利子所得、配当所得、譲渡所得などです。
そして上記の分類に分けられないような収入があった場合には、それらをまとめて「雑所得」という言い方をしています。
この雑所得の例としては、年金による所得と仮想通貨により利益が出た時に生じた所得などがあります。
もしあなたのビジネスが事業ではなく副業となれば、この「雑所得」に分類されることになります。
この「雑所得」ですが、ある特徴があります。
その特徴とは、他の所得に比べて控除が少ないこと、所得金額が20万円を超えらたら必ず申告をしなければいけないことです。
あなたのビジネスがもし事業として扱われるならば、様々な控除が使えたと思います。しかし、雑所得に分類されるようになると、これらの控除が使えなくなりますので、そこからさまざまな問題が発生します。
損益通算ができない
問題の一つは、損益通算ができないことです。
損益通算というのは、簡単に言うと赤字と黒字を相殺することです。
他から給与をもらっていて、自分でビジネスも行っている場合、もしそのビジネスで赤字が出た場合には給与からの所得と相殺することができます。
相殺した結果、税金を払い過ぎていると分かると税の還付が行われるのですが、これができないとなると税の還付も行われません。
青色申告特別控除が使えない
2番目の問題として、青色申告特別控除が使えないことです。
あなたがすでに青色申告特別控除の申告書を提出している場合、そのビジネスが事業として認められず副業扱いになってしまうと、この控除額が適用にならなくなります。
控除額は記帳の方法やe-taxなどの申告方法の違いによって、65万円、55万円、10万円の控除に分かれます。
控除額が大きい分この控除が使えないと、それだけ課税所得が増えて税金が増えてしまう結果になります。
少額減価償却資産の特例が使えない
3番目として30万円未満の少額減価償却資産の特例が使えないことです。
たとえばそのビジネスで必要な備品やパソコンなどの機材や機械を購入した場合、事業の用途としてならば購入金額が30万円以下については一括で経費にすることができました。
しかしもしあなたのビジネスが事業として認められなければ、そのようなことは今後できなくなります。一括にする代わりに定められた耐用年数で割って、毎年一定金額を経費として計上することになります。
ですからその分経費になる金額が減りますので、結果として税金が増えることになります。
青色専従者給与が認められない
4番目の問題点として、青色専従者給与が認められないことです。
青色専従者給与というのは、あなたの家族がそのビジネスを手伝ってくれた場合に支払う給与のことです。すでに青色申告をしていて、事前にこの給与について税務署に申請を出しておけば、この分は必要経費として扱うことができます。
もしあなたのビジネスが副業扱いになってしまうと、この青色事業専従者給与が使えず、所得が増えて税金が増える結果になります。
まとめ - 副業扱いは増税になる可能性が大
このように、あなたのビジネスが事業ではなく副業扱いになってしまった場合、様々な控除や特例が使えず、課税所得が増えることから増税になる可能性が高くなります。
今回の通達の改正については、一部の人が事業と関係ない費用を経費扱いにしていたり、故意に事業を赤字にすることで、給与所得との損益通算で税金の還付を得ようとする動きを取り締まろうとする試みだと言われています。
このような取り締まりや税負担を増やすという流れは、今後副業のみならず、個人事業主全体に拡大していくことでしょう。
会社員として、個人事業主として誠実に仕事をしているあなたが、今後どのように対応すればよいかについて、次回の「2022年雑所得の改正」とからめてお話ししたいと思います。