認知症を患う家族の介護

介護の中でも特に悩みが多いのが親が認知症を患ったときです。

数年後には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となります。

その時には高齢者の中で認知症患者が占める割合が全体の20パーセントに達すると言われています。

今後は高齢者の5人に1人が認知症を患う予測になります。

その中で親が認知症を患った場合の介護については介護施設に任せている家庭も多いです。

しかし実際のところは親を介護施設に預けている家族よりも様々な理由から家庭の中で介護をしている家がが多いのです。

介護に伴う経済的負担

ではどのような理由から家庭内での介護になってしまうのでしょうか?

最も大きい理由として挙げられるのが認知症患者を抱える家庭の経済的な負担です。

介護を外部にお願いする時に介護保険を利用しますが、認知症患者を抱える家庭の場合利用する頻度や時間が大きいためそれだけでは十分な介護をまかなうことができません。

そのため家族の中でなんとかやりくりをしようとします。

十分な介護をしようとすると家族が仕事を休職したり働き続けることが困難となって退職するなど収入が減る場合も起こります。
休職や退職には至らなくても家族の精神的、肉体的な負担が大きいために、家庭の安定化を考える上で介護保険が適用にならない外部の機関や人を利用する場合も出てきます。

そういったことから認知症の親を抱える家族の負担は相当なものになってしまうのです。

認知症患者を預けられる介護施設

そのような認知症の親を抱える家族が自宅以外での介護を考える場合、利用できる介護施設には2つのタイプがあります。

一つには介護付き有料老人ホーム、そして特別養護老人ホームです。

認知症と判断され介護認定を受けた場合要介護3以上が付与されるのですが、現在特別養護老人ホームの入所には要介護3以上の認定が必要になります。

認知症の人が集団で生活するようなグループホームも介護付き有料老人ホームの一つです。

グループホームの場合も他の介護付き有料老人ホームと同様に、入居一時金が必要な所とそうでない所があります。

サービスを考慮に入れず費用の点だけから考えると特別養護老人ホームに親を入所させた方が経済的な負担は抑えられるでしょう。

そういったことから、親を特別養護老人ホームに入所させようとしても住居地では半年あるいは1年以上かかるというような場合には、特別養護老人ホームに入所待ちをする間に介護付き有料老人ホームを一時的に利用するというのも選択肢の一つです。

認知症ケアを行う施設

介護付き有料老人ホームの中には認知症のケアに特化した施設というものがあります。

一例をあげると3年前に施設訪問をさせていただいた都内のある施設は、リハビリと認知症ケアを特に強化した介護付き有料老人ホームです。

認知症であっても残された能力を活用した接し方を心掛けていて、「おむつゼロ」「特殊浴ゼロ」「車いすゼロ」「系管食ゼロ」の4大ゼロを掲げながら、認知症患者の自立支援を後押ししています。

認知症ではない方も入所でき、その介護度に合わせて居住する階が異なるため介護がしやすくなっています。

このような施設を利用することによって認知症が改善したり、認知症であっても自立支援を目指すことができるなど認知症患者が尊厳を保って快適に過ごせる環境が整いやすくなります。

経済的な負担はありますが、家族が認知症の親の介護から解放されるだけでなく、認知症である親も居心地良く過ごせるなどのメリットが多いのがこの施設の特徴でもあります。

介護付き有料老人ホームを賢く利用する

そういったことから、親を特別養護老人ホームに入所させようとしても住居地では半年あるいは1年、それ以上かかるというような場合には、入所待ちをする間に介護付き有料老人ホームを一時的に利用するというのも選択肢の一つです。

入居一時金についても入所期間が1年や2年というように短ければ、支払った金額の多くが返金される場合がありますので(注、介護施設の規定について説明を受けるなど事前に確認することをお勧めします)、一時金が低い介護付き有料老人ホームを選ぶようにすれば経済的な面での家族の負担は比較的抑えられるでしょう。

家庭の中で認知症の家族を介護をしている場合、家族への経済的な負担はもちろんのことですが精神的、肉体的な負担もかなり大きいです。

個々の家庭の事情や経済状況もありますが、家庭生活が崩壊したり精神面にかなりのダメージを負うなど大きな問題になる前に介護施設を利用することも選択肢に入れましょう。

介護付き有料老人ホームへの入所については、経済的な面でのハードルであれば預ける期間を短くしたり、比較的安価な一時金の施設を利用する、年金以外の親の預貯金で賄うなどで選択肢が広がることもあります。

認知症である親と家族との間が良好である状態を維持できるように、家族だけの孤立した状態での介護から家族の未来に向けての介護へと考えていくのが良いと思います。